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コマーシャルの表現の面白さ

”白玉の歯にしみ通る秋の夜の酒は静かに飲むべかりける”牧水の定番の秋の詩、遠くなりましたね! 寒さが増して来ると、さあ日本酒の季節だと一般の酒飲みは思ったものでした。いまやこの詩を知っている人も少なくなったのかと少し寂しくなります。

日本酒の衰退は目を覆うものがあります、昭和52年当時から見ますと半分以下の出荷量でしょうか、焼酎に押され、ビールに飲まれ、その留まるところを知りません。

それでも最近日本酒のCMが目に付くようになりました、月桂冠、白鶴、黄桜など、年間を通じてコマーシャルを出している蔵元もありますが、一般的には9月、10月から1月までくらいが、日本酒のPRの季節でした。

今、その日本酒のCMが極端に少なくなってしまいました、、嗜好の変化だけでしょうか。

11月、久し振りに菊正宗のCMを見ました、先ずはこの菊正宗の話です。

”最近の酒は甘いとお嘆きの貴兄に辛口のキクマサを贈ります”お聞きになった人は多いと思います、このコピーは当時(往時?)、かく言う小生が提案したものであります。

当時一般的に甘口の酒が多く、辛口の一筋の菊正宗は苦境に立たされていました、辛口こそ酒の本来の姿である、しかし世間の中心は甘口、どうすればこれをうまく抵抗無く訴える事が出来るか?これがテーマでした。

色々考えましたが、「酒とは甘口は駄目で辛口が良い」、とダイレクトに言いたいのですが、これは他銘柄の誹謗に繋がる、そこでこの”甘口が多いとお嘆きの貴兄に・・・のコピー提案しました。

満場一致で決定、何故ならば、”甘口の酒が多いとお嘆きの貴兄は”、飲み屋で良く言われていた言葉”最近甘口が多いね”を使っただけで、甘口の酒を誹謗したものではなく、その中で”辛口のキクマサを贈ります”のコピーはキクマサの考えを主張しただけのものでありました。日本のCMは他を誹謗中傷するものは風土が許さず、大体緩やかな表現が多いのが普通です。

従って、このCMは菊正宗は酒本来の辛口のメーカーであると言う主張を、他を誹謗しないでPRしたものとなり、キクマサ内部、又世間の評価を大きく得る事が出来ました。

かなり後の事になりますが、このCMがきっかけとなり、本来甘口の蔵元も辛口を出すようになり、今や辛口が主流となっております。*世界の酒の中心は辛口ですよ!

さて、今、出ている菊正宗のCMですが、これも又、小生が演出したCMソングが使われています、小生にとっては懐かしい曲ですが、何しろ30数年前のものですから、不思議な感じがします。”何時もの酒場で何時もの酒、やっぱり俺はキクマサムネ”作曲中村八大(故)、詩、永六輔、歌、西田佐知子。西田佐知子さんご存知ですか”アカシヤの雨がやむ時””コーヒールンバ”など独特の声で独特の雰囲気の人気歌手でした。

録音の時”わたし最近歌ってないのよね”と彼女は言いました、ちょうど一線歌手を引いたときでした、同行者は関口宏さん、そうです今でも一線司会者の関口さんでした。

西田さんは関口宏さんの現在の奥さんなのです。

次にスナックメーカーの雄、カルビーの話をしましょう、当時、小生はカルビーのイメージボード(街で見かける3m×4mの屋外広告)の扱いを頂いていました。

カルビーはご承知のように”やめられない、とまらないカッパエビセン”が有名ですね。

最近でも一度だけ音楽を変えて流されていました、このCMは誰でも知っているもので、非常に親しまれた優秀なものでした。

この項は菊正宗のような成功(自慢?)ではなく、叱られた話であります。

当時のカルビーの社長に会った時、ところで”柴田さん、やめられない止まらないのCMの復活はどうでしょうね”と聞かれました、その時はこのCMを放送しなくなってから数年が経っていました、

小生の答えは、社長”やめられる、とめられるカッパエビセン”の方が良いですよ、とたんに口を利いてもらえなくなりました。社長としては”あのCMは不朽の名作です、積極的に使いましょう”と言う小生の言葉を待っておられたようでした。

しかし、小生の返事は全く正反対、馬鹿にされたと思われたのでしょうね、あれから社長にお目に掛かる機会も無くなってしまいました。

しかし小生は本気で”やめられる、とめられるカッパエビセン”が良いと思っていました。

その当時から際限も無くスナック菓子を食べる習慣に対しての批判、特に子供への影響が云々されていました、現在のようにメタボがどうとか言う時代ではありませんでしたが、世のお母さん方の心配の種になりつつあったのです。

つまり”やめられない、とまらない”は時代に逆行しており、食べ方を加減する時代となっていたのです。

小生の発言はその時代背景を写して、この最も有名な”やめられない、とまらない・・・CMを”やめられる、とめられる・・・”にする事によりパロデイーにし、世の新しい評価を得ようとしたのです。有名だからこそ、このパロデイーは受けるのです、実施していれば必ず世に受け、新しい伝説を生んだでしょう、今でもこれは間違っていなかったと思っています。

勿論当時の社長は稀に見る学者的雰囲気と誠実な方で、商品に対する真摯な姿勢を持っておられただけに、このCMに対する思い入れが強かったのだと思います。

世の中を映すCMは少ないものです、ただ有名タレントを出し、インタレストだけを取るCMを考える時期に来たのではないでしょうか。

 

 

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コメント

最近では女性の活躍が目覚しく、日本酒もお菓子もターゲットが女性になっているものも少なくありません。従って、やめられるとめられるという表現は時代背景的には間違ってはいないと思います。
やめられるという表現は少しストレートですがちょっと表現を変えて、少量・手軽・清潔・おしゃれといった女性が好む要素を盛り込めば面白いコピーが生まれそうですね。
それにしてもここ最近はストレートに要求してくるものが多く、深みのあるCMをあまり見ることができないことは寂しい限りです。

投稿: kimura | 2008年11月20日 (木) 12時49分

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